ホームインスペクションの将来
ホームインスペクションは日本ではあまり耳馴染みのない言葉ではありますが、今後は中古物件を売買するときには「必ず行うこと」になるかもしれません。それくらい、昨今の不動産売買に深く関わっています。
そもそも「ホームインスペクション」とは、住宅(ホーム)を調査(インスペクション)することです。
ホームインスペクションすることにより、もし建物に欠陥があれば中古物件を売買する前に発見できます。
ホームインスペクションを行う人
ホームインスペクションを行う人は、建築士などの専門家になります。
しかしながら、「ホームインスペクションを行うための資格」はないため、極端な話ですが誰でもできてしまいます。
そのため、一定の信頼感がないと買主・売主は調査を依頼しないため、民間資格を取得するか「建築士」などの建築関連の資格を取得するのが一般的です。
インスペクションの資格や登録は「NPO法人日本ホームインスペクターズ協会」「建築士会インスペクター」「既存住宅状況調査技術者」などの機関で行います。
それにより、第三者からの信頼を得た状態でホームインスペクションを実施します。
ホームインスペクションの目的
ホームインスペクションの主な目的は「中古住宅の流通促進」と「買主保護」の2つです。
世の中に様々な商品があるなかで、「住宅」は最も高価な商品の1つです。
しかし、高価にもかかわらず、品質に関しては素人目には分かりにくいのも事実です。
そのため、建築の専門家の目によって、建物を調査することで、買主の安心感につなげることができます。
ホームインスペクションは欧米では一般的ですが、日本ではまだまだ浸透していないのが現状です。
ホームインスペクションの内容
ホームインスペクションでは、具体的には次のような点を調査します。
- 建物や設備の欠損はないか
- 建物にひび割れはないか
- 建物や室内や配管に変色はないか
- 設備関係にぐらつきはないか
- 設備関係の状態・動作確認
- 土台や素材に腐食はないか
ホームインスペクションでは、建物が劣化することにより入居者が被害を受けるポイントの全てを調査します。
調査する項目は多岐に渡り、床や壁などの室内のみならず、外壁や共用部分まで調査します。
特に一戸建てであれば、雨どいや屋根なども調査し、不備や欠陥がないかを確認します。調査は、調査員の「目視」による調査が基本ですが、機器を利用して詳細に調査する場合もあります。
機器を利用する例として、「電気抵抗式木材水分計」があります。この機器では、木材の含水量を電気的に調査します。
調査内容はホームインスペクションを行う業者によって異なります。また、調査を依頼する人がどこまで調査を希望するかによっても変化します。
民法改正でホームインスペクションの義務化?
2016年の2月に、「宅地建物取引業法(宅建業法)」が改正されました。
2016年12月に、国土交通省の分科会が2016年2月に改正した宅建業法の運用方法を発表されました。
その中で「既存建物取引時の情報提供の充実」の項目があり、この項目は「ホームインスペクション」と深く関係する項目です。
改正内容
この宅建業法の改正内容は、不動産を仲介する不動産会社に対し「売買物件の現況を確認するために建物インスペクションの活用を促す」内容になっています。
国土交通省の分科会が発表した内容によると、2018年4月より不動産会社は買主・売主と売買契約(物件の売買を不動産会社に依頼する契約)を結ぶ際にに「ホームインスペクション業者をあっせんできるかどうか」を買主・売主に対して書面で明示します。
あっせんが可能であれば、依頼に応じて不動産会社がホームインスペクション業者を手配する流れになります。
ホームインスペクション業者は建物の構造上で重要な部分について第三者として調査を実施します。
ホームインスペクションした結果は重要事項説明として買主に伝えられ、売買契約時に「建物を売主・買主が双方確認した」旨の書面を交付することになりました。
仮に、あっせんが不可能であれば、買主自らがホームインスペクション業者を探すか、他の不動産会社にあっせんを依頼します。
このことから、不動産会社からするとホームインスペクション業者を知っていれば良いだけの話なので、「あっせんできない」となると信用を失います。
そのため、大抵の不動産会社はあっせんすると考えられます。
義務化について
よく勘違いされがちですが、「ホームインスペクションを行うこと」自体が義務化されたワケではありません。
「ホームインスペクションをあっせん出来るか」を明示することが義務化されたのです。
売主が「ホームインスペクションを許可しない」と主張すれば、ホームインスペクションをすることはできません。
しかし、ホームインスペクションを拒否すると買主に不安感を持たせてしまい、物件が売れにくくなるというデメリットがあります。
そのため、結果的には法改正の影響を受けてホームインスペクションは普及するものと考えられます。
法改正の目的
法改正の目的は、「中古住宅の流通促進」と「買主保護」の2点です。
中古住宅を購入する際に、買主は建物の劣化具合を知りたいと考えます。
第三者であるホームインスペクション業者が建物のチェックすることで、買主は建物の状態を把握でき、安心感が高まります。その結果として、中古住宅の流通は活性化します。
加えて、そもそも「ホームインスペクション」を知らない消費者にも「中古住宅を購入する前には『建物調査』ができる」と周知されることが目的です。