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宅建業法改正とホームインスペクション

住宅と不動産の看板

住宅の量が充足した今、政府は新築住宅の供給から既存の住宅(中古住宅)の質の向上へと舵を切っています。そこで、消費者が安心して中古住宅の売買ができるように、住宅の質に対する情報提供を充実させようとしていますが、個人が売主であることが多い中古住宅では、売主に多くの負担を求めるのは難しいことから、専門家が建物の状態を診断するインスペクションを活用しようと考えています。

国土交通省では、売買時点の住宅の状況を把握できるホームインスペクションについて、どの検査事業者が行ったかによらず同様の結果が得られるように、「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を2013年6月に策定しています。

ガイドラインでは、中古住宅の現況を把握するための基礎的な現況検査、例えば「構造耐力上の安全性に問題のある可能性が高いもの(例:蟻害、腐朽・腐食や傾斜、躯体のひび割れ・欠損等)」や「雨漏り・水漏れが発生または発生する可能性が高いもの」、「設備配管に日常生活上支障のある劣化等が生じているもの(例:給排水管の漏れや詰まり等)」を診断するように指示していますが、あくまで目視可能な範囲に限定されています。

ホームインスペクションで確認できない重大な欠陥が発覚した場合に、その補修費用を保険金でまかなえる「既存住宅瑕疵(かし)保険」の加入を促せば、購入後のトラブルも防止できるし、瑕疵保険に加入するためには検査機関による診断で保険会社が求める品質を満たす必要があるため、第三者による建物の状況調査されることになります。

ホームインスペクションや瑕疵保険の加入を促して、中古住宅の売買を活性化させたいという政府の考えが、宅建業法改正の背景にあります。

売買契約前のホームインスペクションの実施を促す効果も

宅建業法の改正で、ホームインスペクションが義務付けられたと誤解している人もいますが、宅建業法の一部改正で盛り込まれたインスペクションに関する規定とは、宅地建物取引業者に次の内容を義務付けただけです。

分かりやすくいえば、宅地建物取引業者は2018年4月から、次のことをしなければならなくなっています。

  1. 中古住宅の売買を不動産会社に依頼し、媒介契約を交わす際に、インスペクション事業者をあっせんできるかどうかなどを媒介契約書に記載すること
  2. 売買契約締結前に買主に行う重要事項説明の際に、インスペクションが実施された場合はその結果について説明すること
  3. 売買契約を締結する際に、インスペクション・ガイドラインで診断すべき基礎や外壁の状態、雨漏りの状態などを売主・買主双方で確認し、その内容を書面にして双方に交付すること

現実的には、売主が物件の仲介を不動産会社に依頼する際に媒介契約を交わすことが多い(買主は購入物件が決まってから契約前に媒介契約を交わすことが多い)ため、1. では主に売主にインスペクションの実施を促す効果があると考えられます。

2. では買主に建物の状態を理解したうえで購入を決めたり、価格の妥当性を判断きるメリットがあります。

3. ではインスペクションなど第三者の調査機関が調査した結果を対象としています。

住宅を購入する側にとっては、これまで以上に契約内容が重要になるため、より慎重に契約を結ぶ必要があります。